アサート No.491(2018年10月27日)

【投稿】 新たな世界の支配者・軍事―デジタル複合企業と情報操作
                             福井 杉本達也  

1 沖縄県知事選での恐るべき情報操作
 9月30日に行われた沖縄知事選挙は玉城デニー氏の圧勝であった。しかし、その裏で政府・与党は“植民地”の知事選に露骨に介入した。『週刊ダイヤモンド』(2018.10.13)は、介入の一端を、創価学会と与党・公明党の沖縄知事選への組織選挙という視点から「全国から5000人もの会員が現地入りしたとされる。期日前投票者数は過去最高の40万人超に上り、全有権者の35%に達した。選挙当日の台風襲来の影響もあるだろうが、前述したように学会の動員力もその押し上げに一役買っているだろう。重要な選挙に選挙区外の会員が動員されるケースは、都議選挙などでもよく見られる光景だ。」としつつ、「公明党はこうした学会員の涙ぐましい努力により支えられているわけだが…総力を挙げた沖縄県知事選でも敗北した。」と書いた。沖縄に居住しない、何のつてもない者が県民に投票を依頼しても聞く耳を持つ者などいない。翁長前知事の死去により若干選挙が早くなったといはいえ、知事選の日程はほぼ決められていた。国政選挙や重要な地方選もない時期は沖縄に集中できる。知事選の前に住民票を移動し選挙人名簿に登録されれば投票できる。5000人は事実上の与党推薦候補への上乗せである。そのため執拗に「期日前投票」が呼びかけられた。それでも、県民を裏切った佐喜真陣営は劣勢であった。
 そこで、与党は劣勢を挽回しようと悪あがきでニセの情勢調査をメディアに流し、メディアはそれに忠実に従った。「選挙結果は、事前のメディアの接戦報道とは異なり、玉城氏が圧勝する結果となった。…『中立的なメディアの世論調査では、当初から知名度のある玉城氏がダブルスコアでリードし、その後も常にリードしていました。ですが与党側は、劣勢を少しでもはね返そうと、メディアに対するリークなども見られましたね』…与党側は、与党独自の世論調査の結果として、最初が10ポイント差、1週間前が5ポイント差、5日前が3ポイント差、3日前が1ポイント差と、佐喜真氏が玉城氏を徐々に追い上げつつあるかのような数字を意図的に流布させていた。またそれだけに限らず、『出口調査では玉城氏と回答しつつ、実際には佐喜真氏に投票する隠れ佐喜真支持者が多い』という情報までも流されていたという。現実には、佐喜真氏の追い上げがあったものの、玉城氏は10%前後のリードを最後まで確保していたようだが、メディアのなかには、こうした情報戦の影響を受けて佐喜真氏の勝利を予測していた社すらあった。」(yahoo=「ダイヤモンド・オンライン」2018.10.7)と書いている。つまり、メディアの多くが与党の情報操作に全面的に協力したのである。
 出口調査の結果から、朝日系TVでは開票が始まった20時3分には早々と玉城氏の「当確」を出し、田原総一郎が知事選を振り返っての解説を始めた。しかし、NHKは21時30分頃まで「当確」を出さなかった。その間、台風情報のみを放送し、一切沖縄県知事選に触れることはなかった。あたかも、沖縄県知事選はなかったかような報道姿勢であった。「マスコミは出口調査をもとに『公明党支持者の4人に1人(25%)が玉城に投票した』と報道した。だが学会員歴30年を超すベテラン学会員は、『玉城に流れた票は30〜40%』と見る。」(田中龍作ジャーナル:2018.10.14)。当選後、TVに大写しされた玉城氏の後ろで学会の三色旗がはためいていた。

2 トランプ大統領とメディアとの大バトル
 米ニューヨーク・タイムズ紙電子版は9月5日、 トランプ大統領の振る舞いを「健全な国家にとって有害」と断じる匿名の政府高官による異例の寄稿を掲載した。問題の根源は「大統領の道徳観の欠如」にあるとし、「トランプ氏には意思決定で確固たる信念がない。外交面で米国と価値観を共有する同盟国よりも、ロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長のような『独裁者』を好む傾向がある。…憲法規定に沿い、大統領を強制的に排除する可能性もささやかれたこともある」と書いた(福井=共同:2018.9.7)。これに対し、トランプ氏は6日、政権内部の隠れた「ディープ・ステート(闇の政府)」が自身を倒すためにメディアにリークしているという陰謀論を主張した(東京:2018.9.7)。
ワシントン・ポスト紙もトランプ大統領に批判的だ。同紙を保有するのはアマゾンのCEOであるジェフ・ベゾス氏である。トランプ氏はアマゾンが不当な低料金を強いて米郵政公社の雇用を奪っていると攻撃している。これに対し、ベゾフ氏は「メディアをならず者や国民の敵と呼ぶのは危険だ」(日経:2018.9.15)とトランプ氏批判を強めている。アマゾンの時価総額はアップルに次ぎ2位の1兆ドル、ベゾフ氏の世界長者番付はマイクロソフトのビル・ゲイツ氏を抜きトップに立った。

3 巨大ハイテク企業は新たな世界の支配者 
 ベゾフ氏のアマゾンを始め、巨大ハイテク企業であるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は、新たな世界の支配者である。彼らの富はどこから来たのか。ノム・チョムスキーは「彼らはインターネット、コンピューター、人工衛星などに頼っているが、これらを開発したのは大学の研究所や政府の研究機関だ。これらの技術は30年ほど公共部門で育ててから、民間に公開されていた。…税金を使うなら、ベンタゴン(国防総省)経由が最も簡単な方法だ。…GAFAも他の大企業同様にこのシステムに寄生している。米国は複雑な国家資本主義制度を採用している。」(『週刊ダイヤモンド』2018.9.29)。と述べている。
 8月、フェイスブック・アップル・グーグル等はプラットフォームの所有者として“悪意に満ちている”と見なす“間違った記事”を広めているとして、著名ジャーナリストのアレックス・ジョーンズ氏とウェブサイトをサービスから排除した。これらの検索エンジンは公共的議論から保守的な世界観を検閲するための取り組みを始めた。現代版の焚書坑儒である。ジョーンズ氏は2016年の大統領選挙運動では、トランプ氏を強く支持していた。(「アレックス・ジョーンズ粛清:2018年中間選挙に干渉するアメリカ巨大ハイテク企業」『マスコミに載らない海外記事』:2018.8.11)米国を始め欧米諸国では民衆を力づくに制御することは難しい。別の方法が必要である。その中で生まれたのが巨大ハイテク企業である。「その使命は人々の態度や意見を操作すること」(チョムスキー:「『ほんとうの自由』のために闘う」『世界』:2014.6)にある。

4 軍事―デジタル複合企業GAFAの役割とスノーデンの警告
 エドワード・スノーデン氏の警告によれば、米国では“模範的”“愛国的”市民が集中的な監視対象になり、調査報道ジャーナリストたちが“国家の脅威”としてリストに上がっている。大量監視は国民の安全ではなく、グローバルな支配体制を守るために、すべての個人を“容疑者”として見張ることである。「情報通信産業は利益の追求という『経済的インセンティブ』に突き動かされながら、いまや世界の軍産複合体の中心部で、この広範な戦争と支配の構造を下支えしている」。日本政府は米国の監視システムによって監視されながら、一方では忠実な下僕として、日本人の通信データを米国に横流している。強権発動をするまでもなく、「報道の『不自由』が日本のメディアに蔓延し、日本の報道関係者はネット上の流動的、断片的な情報から内向きに聞こえのよいもの、効率よくニュースにできるものを選択する『不自由』に慣れ、日本人の世界を理解する力を深刻に低下させている。」(小笠原 みどり:スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」『現代ビジネス』2016.8.22)のである。こうしたメディア支配の下、沖縄知事選での情報操作が行われた。沖縄県民は米国や日本政府にとっては植民地の“土人”(機動隊員の認識)であり、“容疑者”であり、監視の対象であり、情報操作の対象である。本土のメディアのほとんどが県民の意志を無視した。東京の創価学会は5000人もの“にわか有権者”を送り込み、物理的にも県民を屈服させようとした。しかし、選挙の結果、それは全く破綻した。沖縄県民(また沖縄の学会員も)が主権者であることを宣言し、“土人”の立場に甘んずることを拒否したのである。
 巨大ハイテク企業は一見、軍事とは無縁な存在に見えるが、「Googleは、米軍のイラクで使用されていた地図作成技術を提供し、中央情報局のデータをホストし、国家安全保障局の膨大な情報データベースを索引付けし、軍用ロボットを建設し、ペンタゴンとスパイ衛星を共同発射し、 AmazonのeBayからFacebookにいたるまで、これらの企業の一部は、アメリカのセキュリティサービスと完全に絡み合っている」(エリオット・ガブリエル:2018.9.4)。我々は、こうした新しい軍事―デジタル複合企業の監視下・支配下にある。
 そもそも、我々が、日常的に使用しているインターネットの起源は、1969年に国防総省の高度研究プロジェクト庁(ARPA)の科学者たちによって構想された。「Arpanet」と呼ばれたこの分散型システムは、戦場レベルまでの軍事ノードを接続し、データを素早く無線で共有することを可能にした。核攻撃や大規模な戦争が発生した場合、ネットワークのスワッシュが破壊されても引き続き運用されるものとして構想・設計された。インターネットはこの努力の“成果”である。社会的な混乱を予測し予防する最終目的で、情報を収集して共有し、リアルタイムで世界を監視し、人々や政治運動を研究し分析するコンピュータシステムを構築しようとする試みである。 軍事―デジタル複合企業は、軍事、知能、警察の機能の形で国家の抑圧的な武器と容易に協力し、その結果、政府全体と比較して秘密の国家安全保障国家を劇的に強化している。

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