アサート No.487(2018年6月23日)

【投稿】 日本へのプルトニウム削減要求と東アジアの非核化
                            福井 杉本達也 

1 米が日本にプルトニウム削減を強固に要求
 「米、日本にプルトニウム削減要求」というトップ記事を6月10日の日経新聞が掲載した。記事で「核兵器への転用リスクがあるプルトニウムを日本がためこむことは、中国などから『不要の疑念を呼ぶ』とかねて批判されてきた。 米国は12日の米朝首脳会談で、北朝鮮に完全な非核化を迫る。国際社会は核不拡散へ断固とした姿勢をみせており、日本を特別扱いできないと判断した可能性もある。このため、米国家安全保障会議 (NSC)など は日本政府にプルトニウムの適切な利用・管理を要求した。」と書いている。
 12日にシンガポールで米・トランプ大統領と北朝鮮・金正恩委員長による歴史的な会談を行われ、両首脳は朝鮮半島の「完全な非核化」に取り組み、米国は体制保証を約束することを柱とした共同声明に署名した。朝鮮戦争の終結にまでは言及していないが、プロセスとしては、朝鮮戦争の終結は「国連軍」としての在韓米軍の駐留根拠をなくすものであり、在韓米軍の撤退、在日米軍の縮小から撤退へとつながるものである。その相互信頼関係の前提として、まず、米韓軍事演習の中止が行われることとなった。この期に及んでも「小野寺五典防衛相は13日、トランプ米大統領が米朝首脳会談後に米韓合同軍事演習中止の意向を示したことについて『米韓演習や在韓米軍は東アジアの安全保障に重要な役割を持っている』と述べ、懸念を示した。北朝鮮対応では『今の圧力を続けていく姿勢に変わりはない』との考えを示した。」と報道されているが、全く東アジア情勢の大転換を理解しない発言である(ロイター:2018.6.13)。朝鮮半島の「非核化」は当然ながら、東アジアに展開する米軍の「非核化」、日本の「非核化」も含むものである。それが、相互確証である。日本が核兵器の材料であるプルトニウムを大量にため込むことは許されない。朝鮮半島の「非核化」において、あたかも日本が局外の第三者のように振る舞うことなど許されるはずもない。

2 47トンものプルトニウムを保有する日本
 プルトニウムの製造は、核兵器への転用を防ぐため原則禁止だが、日本は再処理して原発で再利用することを日米原子力協定で認められてきた。非核保有国で再処理を認められている国は日本だけだ。日本は高速増殖炉もんじゅの燃料として消費するというストーリー(ウソ)でプルトニウムをため込んでいく手はずだったが、もんじゅは度重なる事故により2016年12月に正式に廃炉が決定してしまった。通常の原発から出た使用済み核燃料を再処理して、プルトニウムを取り出し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX燃料)として高速増殖炉で使用し、そこで得た核燃料から再びプルトニウムを取り出すという核燃料サイクルは完全に破綻した。高速増殖炉計画が行き詰ったため、ため込んだプルトニウムを言い訳的に消費するために考え出されたもう一つのストーリー(ウソ)がプルサーマル計画である。プルトニウムをMOX燃料に加工し、通常の原発の燃料として消費して少しでも恰好をつけようというのである。しかし、これも2011年の福島第一原発事故で全ての原発が停止し、その後も再稼働が遅々として進まないため、プルトニウムはたまり続け、約47トンに達している。プルトニウムを増やさないためには、まず再処理をやめるしかない。

3 高速増殖炉もんじゅは核兵器を作る目的であったが破綻した
 もんじゅは軍事用プルトニウムを生産する目的で作られた軍事目的の原子炉である。もんじゅは建前ではウランの有効利用を謳っているが、高速増殖炉はプルトニウムを2倍にするのに理論上で90年かかる。また、使用済みの燃料に残るプルトニウムの90%は炉心にあるが、炉心のプルトニウムを完全に再処理する技術は世界になく、さらには高速増殖炉の燃焼の激しさから、さまざまな貴金属ができてしまい、再処理は不可能である。もんじゅの真の目的は、高速増殖炉を使うことで、炉心を包むブランケットにできる純度が高く(98%)再処理が簡単な軍事用のプルトニウム(兵器級プルトニウム)をつくることである。このプルトニウムを使えば小型軽量の高性能核兵器を製造可能である。巡航ミサイルに積み込み、ピンポイントで敵地空港や艦船などに攻撃可能である。ICBMなどの大型核戦力は、大都市攻撃用であるが、大規模報復を招く恐れがある。日本のような狭隘な国土では甚大な損害を被る恐れが高い。日本が高性能の核兵器を自力で作る場合、1発や2発では兵器としての価値はない。イスラエルのように100発〜200発の核兵器が必要となる。そのためには純度が100%に近い軍事用プルトニウムが200キロ程度は必要である。現在、日本は36キロの軍事用プルトニウムを所有している。なぜ、米国の軍産複合体が日本に核燃料の再処理を許したかといえば、これを対中戦略で、万が一、南シナ海で事が起きた場合に米国が直接中国と衝突することは全面核戦争の危険があるため、これを避け、日本に戦術核兵器で核武装させ、中国と対峙させる戦略だったのである。高速増殖炉の「増殖」というのはウソである。最高の核兵器の材料である軍事用プルトニウムを作ることを隠蔽するための言葉であった。

4 青森県六ヶ所村の再処理工場を即時廃止すべき
 青森県六ヶ所村には民間資金で日本原燃鰍設立しこれまでに約14兆円を投じた使用済み核燃料の再処理工場がある。もんじゅを廃止しても、この工場を閉鎖しはないと政府は判断した。再処理工場の所有を国際的に認められた外交上の地位や技術的継承のためにも核燃料サイクルを堅持するというのである。稼働したら最大で年間8トンものプルトニウムを取り出すことが可能である。しかし、この工場の建設は遅れに遅れている。当初、1997年完成を目指したが、その後、延期を繰り返している。2017年12月には再度3年延期して21年度上半期とすると明らかにした。施設の老朽化などによるトラブルが続き原子力規制委員会による審査は中断している。今回で延期は23回目となる。国が掲げる「核燃料サイクル政策」の先行きは見えない。
 一方、 国内初の再処理工場「東海再処理施設」(茨城県東海村)はようやく2014年に廃止が決まった。 廃止費用は作業終了までの70年間で約8千億円に上るとみられる。多分廃止は放射能で困難であろう。

5 政府は 電力会社の問でプルトニウムを譲渡させて消費を促す計画だが?
 日経の6月16日の記事によると、政府は6月下旬にも日本のプルトニウム保有量に上限制を設ける新指針をまとめIAEAに報告するというが、その場合、電力会社の間でプルトニウムを譲渡させてプルサーマルで消費を促すという計画である。しかし、現在、再稼働している原発は、九電・四電・関電であり、東電などは膨大なプルトニウムを保有しながら柏崎刈羽原発の再稼働は困難な状況にある。トランプ政権は日本への削減の要求を強めている。「12日の米朝首脳会談を踏まえた北朝鮮との本格的な非核化協議を控え、日本だけを特別扱いできないからだ。同筋は『核不拡散への懸念はトランプ政権の方がオパマ前政権より強い』と」日米関係筋は明かす。

6 いやでも朝鮮半島の非核化に協力させられる日本
 16日、安倍首相は読売テレビの番組に出演し、朝鮮半島の非核化の費用の負担を検討すると明らかにした。首相は「核の脅威がなくなることによって平和の恩恵を被る日本などが、費用を負担するのは当然」と語った。トランプ大統領は米朝首脳会談後の記者会見で、記者からの「北の非核化の費用は誰が払うのか?」という質問に対して、大統領は「それは韓国と日本が払うだろう。アメリカはそれを払う必要がない、それなりの代償をすでに負っているからだ」と述べ、日本や韓国に費用の負担を促す発言をした。むしろ、日本は既に準備しているだろうという内容の表現であった。「非核化」の請求書はいやでも日本に回ってくる。2002年の日朝平壌宣言において「国交正常化後に@無償資金協力A低金利の長期借款B国際機関を通じた人道支援C国際協力銀行などによる融資、信用供与を実施」することを約束している。一方、拉致問題については「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題が再び生じないよう適切に措置」をとると表現しているに過ぎない。北朝鮮が再調査しても「なかった」とすれば終わりである。日本は拉致問題を提起し続けることによって、経済協力の請求書が回ってくることを拒否し続けてきたのであるが、さすがにここに来てそのような無責任な芸当が国際的には通用しないことが明らかとなりつつある。拉致問題を解決しないなら日本は非核化に協力しないとは言えないのである。なぜなら、トランプ氏から既に安倍首相に対し請求書を回されているからである。これを拒否すれば、政治的・軍事的圧力や経済的制裁を受けることを覚悟しなければならない。それは東アジアで外交的に完全に孤立し、トランプ大統領に「お願い詣で」をして深入りしてしまった属国の立場としては不可能である。「非核化」負担どころか、総額2兆ドル?の北朝鮮経済復興費の請求書も回すと言っている。
 日本は原発の再稼働を中止し、再処理工場を閉鎖し、プルトニウムを破棄し、核兵器開発を完全に諦め、北朝鮮と共に東アジアの非核化に取り組むと宣言する以外に、この孤立状況を抜け出す道はない。

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