ASSERT 487号 (2018年6月23日発行)

【投稿】 国際的孤立深まる安倍政権
【投稿】 日本へのプルトニウム削減要求と東アジアの非核化
【投稿】 米朝会談・安倍外交破綻をめぐって---統一戦線論(49)---
【書評】 『地図から消される街──3・11後の「言ってはいけない真実」』 

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【投稿】 国際的孤立深まる安倍政権
           ―3選阻止に向け共闘体制の再構築を―

米朝会談の地平
 6月12日、紆余曲折の末シンガポールで史上初の米朝首脳会談が開かれた。会談後両首脳は共同声明に署名、トランプは単独で記者会見に臨み、その後両首脳は帰国の途に就き「一番長い日」は終わった。
 共同声明では、金正恩が朝鮮半島の完全非核化を約束、トランプは北朝鮮の安全保障を約束し、さらに朝鮮半島の平和体制の構築、米朝交渉の継続そして朝鮮戦争時の行方不明者、捕虜の遺骨返還などが合意された。
 これに対し関係国内からは、非核化の具体策や工程表が明らかではない、とりわけ「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)が欠落している、などとの批判が提起され、声明には注目された朝鮮戦争の終戦宣言も盛り込まれなかった。
 確かに共同声明の内容は極めて簡素であり、4月27日の南北首脳会談で確認された板門店宣言を大きく超えるものではなかったが、今回の米朝会談―共同声明の意義は、両首脳が直接会談し、朝鮮半島和平のゴールが確認されたことであろう。すなわち近い将来、非核化された朝鮮半島に於いて、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が平和共存するというかたちが示されたのである。
 共同声明で触れられなかった点についても、爾後にフォローが行われている。朝鮮戦争について記者会見でトランプは「戦争はまもなく終わる」と述べており、先に板門店で確認されたように、年内に終戦確認が行われると考えられる。
 非核化のスケジュールについても、13日に訪韓したポンペイオが、トランプの第1期目である「あと2年半の間に主要な非核化が達成できる」との見通しを示した。
 従前言われていた即時の非核化は非現実的なため除外され、段階的な核廃棄を進め、CVID状態を達成するという方向性が明らかとなった。
 残された問題の一つに北朝鮮が主張する、核廃棄と制裁緩和の「段階別、同時行動」履行がある。14日の日米韓外相会談では「完全な非核化なしに制裁は解除されない」ことが確認されたが、次の米中外相会談では「適切な時期に制裁を解除する」との認識で一致した。
 これは、中国が先行する形で経済支援を進めると言うことであり、これにロシアも加わり、国連決議の見直しが今後加速され、早ければ9月の国連総会で論議されるだろう。
 
日本以外が関与
 今後はこれらを具体化していく慎重かつ着実なプロセスが米朝に求められるが、その際周辺国の関与も重要になってくる。中国は米朝会談を前に2度の中朝首脳会談を行い、シンガポール行きの専用機も提供した。すでに経済協力の動きも準備されつつあり、中朝国境付近の土地価格も上昇しているという。
 韓国は、文政権が緊張緩和、南北融和に向けたイニシアを発揮し、今日の環境を醸成した。6月13日施行の統一地方選挙では首脳会談の成功を追い風に「共に民主党」が圧勝し、南北融和は国論を2分する問題ではなくなった。
 文政権の支持率も7割台であり、アメリカの求める米韓軍事演習の中断、非核化経費負担など、政権的には重い課題も受容する余裕ができたと言える。
 この間朝鮮半島問題への関与に後れを取っていたロシアも、巻き返しに懸命となっている。5月31日にはラブロフ外相が9年ぶりに訪朝、6月14日プーチンはワールドカップ開会式に合わせ訪露した金永南と会談した。ここでプーチンは、9月ウラジオストックで開催される「東方経済フォーラム」に金正恩を招くことも、個別にロシアで会うことも可能だと表明した。
 習近平は昨年秋の共産党大会で権力基盤を確立し、プーチンも3月の大統領選挙で圧勝している。これにより関係国の権力者の当面の任期はトランプ2021年、プーチン2024年、文在寅2022年、習、金は∞となっており、中露韓は北朝鮮と国境を接している分、緊張が緩和されれば積極的な関与が可能である。
 
無駄な抵抗
 こうした動きに焦りの色を濃くしているのが、唯一続投が不明確な安倍政権である。安倍は朝鮮半島の緊張状態が永続化することを望み、北朝鮮への憎悪と緊張を煽り立て自らの政権延命に利用してきた。昨年末までは総選挙の「圧勝」など、それが功を奏してきたが、2018年になり局面が大転換して以降、そうした姿勢が仇となり枷となって、情勢の変化に対応しきれなくなっている。
 安倍の言う通りであれば、今頃朝鮮半島はおろか、日本も無事では済んでいないはずであるが、北朝鮮のミサイルによる被害はなく、国民に被害を及ぼしているのは米軍、自衛隊機の墜落という有様である。
 こうしたなか安倍は「対話のための対話は無意味」「微笑みに騙されてはならない」「最大限の圧力」と威勢の良い啖呵を切ってきたが、現在それらはすっかり影をひそめてしまった。
 5月24日、トランプが交渉戦術として会談中止を表明した時は、いち早く理解と支持を示し、欣喜雀躍したのもつかの間、26日の南北首脳再会談を経て再び軌道に乗るに至っては、その早計さが世界中に露呈してしまった。 
 6月8日、安倍は一縷の望みを託して日米首脳会談を行った。しかしトランプの融和姿勢を変えることはできず、米朝会談での拉致問題の提起を確認することが精いっぱいであり、「拉致問題解決のため」として日朝首脳会談の追及を公言せざるを得なくなった。
 観念した安倍は、11日に開かれた国際交流会議「アジアの未来」(日経新聞主催)の晩餐会で、拉致問題などの解決を前提としながら「北朝鮮には手つかずの資源がある。(北朝鮮国民は)勤勉に違いない、豊富な労働力がある。(北朝鮮の非核化は)アジアを超えた世界規模の経済への影響力がある」とまるで従前からの友好国であるかのような美辞麗句を並べた。
 
主要国のはざまに埋没
 12日夕刻、安倍は囲み取材で、米朝会談への支持とトランプへの謝意を述べるのが精いっぱいな状況であった。安倍は日米首脳会談の前後に、21回目となる日露首脳会談とG7サミットへの出席を行ったが、どちらも成果を上げることができなかった。
 5月26日の日露会談では7月に北方領土に調査団を送ることでは合意したが、共同経済活動を進める担保である「日露双方の法的立場に考慮した制度」は暗礁に乗り上げている。さすがにW杯を口実とした訪露はかなわず、次回の首脳会談は先に述べた9月の「東方経済フォーラム」となるが、領土問題の進展は望むべくもない。
 6月8,9日のカナダG7に至ってはさらに悲惨であった。トランプ政権は、鉄鋼・アルミの追加関税に加え自動車、部品も制裁品目に追加する構えを見せており、会議は通商問題で冒頭から紛糾した。一時は危ぶまれた首脳宣言はまとまったものの、閉会直後にトランプが拒否宣言を行い、橋渡し役を自負していた安倍の面目は潰された。
 追加関税では日本も大きな打撃を受け、自由貿易やTPP推進を公言しているのであるから、安倍は立場を鮮明にしなければならなかったのであるが、拉致問題でトランプに懇願した直後のため、移民問題で暴言を浴びせられても中途半端な立ち位置に終始した。 今回のG7はG6VS1などと評されているが、「海洋プラスチック憲章」への対応からも明らかなように、実際はG5 VS1(+1)というべきものであろう。
 外交の場で存在感を示したい安倍は、先の「アジアの未来」でインド・太平洋地域のインフラ整備に今後3年間で、約500億ドルの投資を表明した。これは前日、中国の青島で開かれた上海協力機構(SCO)首脳会議を意識してのものである。
 G7の混乱を後目に開催されたSCOには、中露の他、対立国であるインド、パキスタンが初の公式参加、ホスト役の習近平は貿易戦争を仕掛けるアメリカを念頭に「開かれた世界経済体制を構築する必要がある」と訴え、G7のお株を奪う形となり、影響力を拡大した。

保身の為の日朝会談 
 この様にこの間国際情勢は、米朝会談を基軸にG5、中露がダイナミズムな動きでイニシアティブを発揮した。こうしたなかに埋没してしまった安倍は「苦しい時の北朝鮮頼み」に回帰しようとしているのである。
 6月16日朝「ウェーク」(読売テレビ)に出演した安倍は、改めて日朝首脳会談の実現に意欲を示し、アメリカの求める非核化経費の負担も検討する考えを明らかにした。さらに、米韓合同軍事演習の中止にも理解を示し、あくまでもアメリカ追随と自己保身を最優先させる姿勢を示した。
 米朝会談が成功した以上、安倍はスピードを上げるバスにしがみ付くので必死なのである。しかし西村副官房長官は17日の「報道プライムサンデー」(フジテレビ)で「8月9月は難しい」と述べるなど、自ら北朝鮮とのパイプをつぶしてきたことが災いし、交渉は難航するだろう。
 こうした安倍の前のめりの姿勢に対して、6月15日の自民党、国防、外交、拉致問題の各部会の合同会合では、右派系議員から批判が相次いだと言う。さらに支持基盤であるネトウヨ、レイシスト、カルトからも「裏切り」の声が上がっている。こうした声も手のひら返しがお手の物の安倍は、自らの総裁3選のためにはあっさりと切り捨てるだろう。
 10日の新潟知事選挙で与党は辛勝したものの、同日の東京都中野区長、同区議補選では野党の足並みの乱れ、右派の分裂という状況の中で与党系候補が敗北した。15日の時事通信の世論調査でも内閣支持率は続落し、次期首相についても小泉、石破に続く3位に甘んじる結果となった。この様に政権基盤は決して盤石ではないことからも、安倍は成果を求めて必死になっているのである。
 この状況を野党は突き崩せていない。新潟知事選は疑似国政選挙の限界が露呈したともいえるが、総括を巡って「内ゲバ」をしている場合ではないだろう。
 今から考えれば、知事選と参議院補選のW選挙に持ち込めれば、より国政、政権の是非を問う構図に引き寄せることができ、前回参議院選(2016年)時の内閣支持率(50%前後)を勘案すれば、今回の1戦1敗ではなく悪くても2戦1勝1敗にできたかもしれない。
 残された期間は少ないが、野党は外交失策を暴くとともに、「高プロ」「カジノ」法案の強行採決、森友、加計事件の隠蔽を最後まで追求し、安倍3選に抗していくべきであろう。(大阪O)