ASSERT 484号 (2018年3月24日発行)

【投稿】 八方塞となった安倍政権
【投稿】 米朝首脳会談の発表と孤立を深める「属国日本」
【投稿】 安倍政権の危機とリベラルの転倒---統一戦線論(46)---
【書評】『核惨事!--東京電力福島第一原子力発電所過酷事故被災事業者からの訴え』 

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【投稿】 八方塞となった安倍政権
             ―内政、外交で負のスパイラルに転落―


崖っぷちの安倍
 2月28日、安倍は今国会での裁量労働制の適応職種拡大に関して、「働き方改革法案」から切り離すことを明らかにし、今国会での成立は断念に追い込まれた。
 さらに3月2日には、朝日新聞の報道で財務省が森友学園に関わる決裁文書を改竄した疑いが浮上した。
 6日には官邸が国交省から、2種類の書類が存在するとの報告を受けていたにもかかわらず、安倍は当初白を切りとおそうとした。しかし12日に至り財務省が改竄の事実を認めざるを得なくなり、安倍ファミリーによるマフィアまがいのスキャンダルが再燃した。昨年、辞任を明言していた安倍は第2次政権発足以来最大の危機に立たされている。
 安倍は何事もなければ3月25日の自民党大会で改憲案を決定し、総裁3選に向けた党内体制確立を目論んでいたが、自民党重鎮も徐々に距離を置き始めており状況は流動的になっている。
 こうしたなか、国際情勢は日本を置き去りに進んでいるが、政権運営能力を喪失しつつある安倍内閣は、まともな対応をなしえていない。トランプの核軍拡に対抗する形でプーチンも3月1日の一般教書演説で、新型の核ミサイルや巡航ミサイルなど、「アメリカのミサイル防衛網を突破できる」新兵器の開発をアピールするなど、米露の対立は先鋭化しつつある。
 その一方、南北首脳会談、米朝首脳会談の開催が矢継ぎ早に決まり、安倍政権は唖然とこれを見つめるばかりの状況となっている。安倍は2月14日にトランプとの電話協議で、米朝対話ムードに不安を表明したが完全に無視された形となり、3月9日再度の電話協議で4月上旬の訪米を取り付けるのが精いっぱいであった。
 12日には韓国特使として金正恩と会談した徐薫国家情報院長が来日し、安倍と河野に南北協議の内容を説明した。昨年末安倍は訪日した康外相を低い椅子に座らせ批判を浴びたが、今回は外相より格下の徐院長を自分と同じグレードの椅子で接遇した。
 この会談では南北協議で拉致問題は議題にならなかったことが明らかにされ、焦燥する安倍は16日に文大統領に電話をかけ、首脳会談で拉致問題を取り上げてほしいと要望し、自分も金正恩と話がしたい旨を伝えたと言う。
 もはや「最大限の圧力」「対話のための対話は無意味」などは空虚なスローガンと化した。内外情勢に押され崖っぷちに立たされた安倍は、これまでの原則を投げ捨て保身に走ろうとしているのである。とりわけ朝鮮半島情勢で譲歩を余儀なくされている安倍は、中国に対する立場を強化し、劣勢の挽回に躍起になっている。 

「帯路分離」目論む
 中国全人代は3月17日、「一帯一路」構想の推進のため「国家国際発展協力署」の設置も決定、習長期独裁体制の下「社会主義の現代化強国」路線が推し進められようとしている。
 こうした動きに対し安倍政権は「一帯一路」への協力姿勢を示しながら、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を対置し、対抗心をむき出しにしている。ここから読み取れるのは、陸路の「一帯」と海路の「一路」を分断する「帯路分離」策動である。
 遙かユーラシア大陸深部を横断する「一帯」には、日本は逆立ちをしても手は出せないでいる。安倍は2015年、自らが唱える「価値観外交」を投げ捨て、ウズベキスタンなど独裁国家を含む中央アジア5カ国とモンゴルを訪問し、経済協力をもって抱き込もうとしたが芳しい成果は得られなかった。
 そこで安倍は内陸部への影響拡大をあきらめ、海路へのプレゼンス拡大をねらっているのである。東シナ海に於いてはアメリカ、南シナ海に於いてはアメリカ、およびフィリピン、ベトナム、インド洋に於いてはインド、スリランカと地域ごとに連携国を設定し、装備品の供与、訓練など軍事協力を含めたイニシア拡大を進めようとしている。
 安倍政権は3月4〜10日に自衛隊統幕議長をインド、スリランカに派遣、14日には、森友事件に対する抗議の声が轟く総理官邸に、スリランカ大統領を招き106億円の円借款を約束、晩餐会で歓待するなど必死になっている。
 もっともこのスリランカやフィリピン、ベトナムは軍事力に於いて脆弱なので、ここにイギリス、オーストリラアさらにはフランスまでもを巻き込もうと躍起になっているのである。安倍は昨年8月来日したメイ首相を厚遇し、「準同盟国」として日英地位協定の締結、ミサイル等兵器の共同開発、合同軍事演習などを検討している。
 
「連合艦隊」で対抗
 現時点で空母を持たない日本単独では、中国の圧倒的な軍事力には対抗できない。そこで空母を持つ米、英、仏、印、そしてF35Bを運用可能な強襲揚陸艦を持つ豪との「多国籍連合艦隊」で臨もうと言う構想であろう。
 しかし、そもそもアメリカにしても各国艦艇の参加は「航行の自由作戦」の負担軽減という点で歓迎するだろうが、遠大な「自由で開かれたインド太平洋戦略」をトランプ政権が理解しているかは疑わしいし、英、仏などはなおさらであろう。
 こうした動きの背景として、イギリスにおいては持て余す軍事力の用途を指摘したが、さらにはこの地域の旧宗主国としての意味合いなど、様々な要因があると考えられる。
 これまでは北朝鮮への連携も加えることで、対中国色を薄めてきたが北朝鮮問題の進展により、本質が露わとなってきたのは安倍にとって誤算の一つである。このところ関係改善の動きを見せている日中関係であるが、安倍の狡猾な動きは中国の警戒感を高めることになる。
 しかしいずれにせよ、21世紀初頭における対中国での連携が、対ロシア帝国を利害とした20世紀初頭の日英同盟以上の重要性を持つとは言えない。イギリスの有権者は、英政府が極東で日本とともに中国と軍事的に対峙することに賛同はしないだろう。
 オーストラリアはこの地域の利害は大きいが、喫緊の問題は東ティモールをめぐるインドネシアとの関係であり、中国の影響力が赤道を越えなければ決定的な動きは行わないだろう。さらにフランスはベトナムの旧宗主国ではあり、無関心ではないだろうが、軍事力の投入はアフリカ大陸の旧植民地に限られている。インドは地域大国として、日本の意図とは関係なく独自の動きをすると考えられる。
 
日露関係も不安定に
 一方日本がこうした国々を対中国の動きに巻き込むほど、逆にこれらの国々からの要請に苦慮することになるだろう。
 イギリス・ソールズベリーでロシア人元スパイと娘が意識不明の重体に陥った事件に関し、イギリス政府はロシアが関与したとして露外交官23名を追放した。3月15日には米英独仏4か国首脳はロシアを非難する共同声明を発表し、資料提出を要求した。
 声明では、ロシア(ソ連)によって開発された軍用神経剤が、第2次大戦後初めてヨーロッパで使用された事例として、強い口調で非難している。今後、事態の推移によっては欧米各国が、ロシアに対し新たな制裁を科すことを検討するだろう。
 こうした動きに対しロシアは英外交官の追放を決定、圧倒的支持で大統領再選を果たしたプーチンは、一層反発を強め、更なる報復措置に出る可能性がある。プーチンの新兵器はアメリカに対するものであるが、欧州の同盟国にとっても充分脅威になるものである。
 2016年秋にはシリアでの軍事作戦に向かうロシア空母部隊を、NATOの艦船約60隻が北海、英仏海峡、地中海でリレー式に追尾、監視、さらに英軍戦闘機も艦隊に近距離まで接近した。
 これらは日本と中国の緊張関係とはレベルの違うものであり、今後欧州での緊張が高まれば、イギリスもフランスも東アジアに派兵する余力はなくなる。日本がイギリスから、軍事面ではなくてもロシアに対する圧力強化への協力を求められた場合、反対にロシアから欧州の動きに与しないよう要請された場合、安倍はどうするつもりなのか。
 ウクライナ問題に関しては、国際社会からの動きをのらりくらりとかわしたが、「準同盟国」からの要請があれば、窮地に陥ることは明らかである。
 ロシアはロシアで日本を疑念の目で見ている。イージス・アショアの導入に関してロシアは警戒感を露わにしてきた。ラブロフ外相は訪日を控えた3月15日、時事通信社などのインタビューで、日米の弾道ミサイル防衛での協力は、日露関係に悪影響を及ぼすと改めて懸念を示した。河野は「ロシアはミサイル防衛を理解している」と強弁しているが、この先の不安定化は免れない。
 
安倍退陣に全力を
 安倍政権が周辺国から信用されていないのは、朝鮮半島情勢への対応でも明らかなような無定見な外交、軍事政策の為である。
 安倍は「「自由で開かれたインド太平洋戦略」「積極的平和主義」などと大言壮語を吐きながら、結局は対北朝鮮、対中国、対○○というその場その場の対抗主義的な危機扇動政策=ショックドクトリンで、保身を図ることしか考えていない。
 そのため4月の日米首脳会談では、米朝首脳会談での拉致問題議題化、鉄鋼・アルミ輸入制裁対象からの日本除外を演出するのだろう。3月17日、朝鮮中央通信は「日本が制裁を続けるならば、永遠に平壌行きの切符を手にすることはできないだろう」と牽制した。
 このように外交での弥縫策でこの間の窮地を脱するのは容易ではない。国内では森友事件に関し、連日のように政権に不都合な新事実が出てきているが、これらの情報源は関係する公的セクターであることは明らかである。
 このように安倍政権は八方塞の状況に陥いり、支持率も急落しているが、3月末の来年度予算成立までは膠着状態が続くと考えられる。野党、民主勢力は森友事件に加え、「高プロ」撤回、軍拡阻止等、あらゆる声を突き付け、安倍を退陣に追い込んでいかなければならない。(大阪O)