ASSERT 477号 (2017年8月26日発行)

【投稿】 黄昏を迎えた安倍政権
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【書評】 『みんなの道徳解体新書』 

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【投稿】 黄昏を迎えた安倍政権
              ―突破口はまたしても危機扇動―

オワコン化する安倍内閣
 8月3日、第3次安倍政権第3次改造内閣が発足した。森友、加計事件さらには陸自日報事件で内閣支持率は急落、これらの幕引きを目論んでの「追い込まれ改造」であり疑惑リセット内閣であると言える。
 交代確実となっていた稲田は改造を待たず、日報問題の責任をとる形で7月28日辞任した。一週間の延命が叶わなかったことは、安倍政権の体力低下―健康寿命が尽き果てたことを如実に物語っている。
 閣僚人事を巡っては、民間からの入閣や小泉進次郎の名も挙がるなど、サプライズがあるのではないかとの観測も流れた。
 しかし、蓋を開けてみれば、河野外務、野田総務、林文科というこれまで安倍政権と距離を置いてきた人物を入閣させたことが、意外性を持つのみでひたすら無難を追及した組閣となった。自民党政権下、「終戦記念日」の閣僚による靖国参拝は、1980年の鈴木善幸内閣以来続けられてきたが今年初めてゼロとなり、連続記録が途絶えた。思想的同志が閣内にいなければこの様な光景になるのである。
 安倍は改造内閣を「仕事人内閣」と自画自賛しているが、これは前内閣で「仕事人」を選ばずに「お友達」を任命していたことを自ら白状することとなった。語るに落ちるとはこのことであろう。しかし組閣直後のインタビューで、江崎沖縄・北方担当相が「官僚の答弁書を朗読させていただく」と素人大臣であることを臆目もなく明らかにし、早くもネーミングに疑問符がついた。
 安倍は組閣、党人事に当たって7月から岸田に相談していたことを5日の読売テレビ「ウェーク」で明らかにしているが、党要職を望む岸田の要望を受け入れ、自分に近い人間を閣僚に任命することを断念せざる得なくなるなど、求心力の低下は明らかである。
 すでに岸田は次期総理の本命と喧伝され、野田や河野も総理候補と目され、とりわけ野田は来年の総裁選への立候補を公言してはばからない。また政権批判を強める石破も虎視眈々と政権の座を狙うなど、焦点はポスト安倍に移っており、安倍政権のオワコン化は確実に進行している。
 
強硬路線への回帰
 新内閣発足で政権支持率の低下は一応の歯止めはかかったものの、森友―加計事件、日報問題は未解決である。さらに政権の骨格を残したため人心一新には程遠く、菅、二階という「悪代官・悪家老」は健在である。
 今回の改造で、政権批判に耐えきれず安倍カラーを自ら薄めた結果、改憲への日程表は大幅な変更を余儀なくされている。組閣後の記者会見で安倍は「(改憲)はスケジュールありきではない・・・論議は党主導で進めてもらいたい」と低姿勢を強調した。
 しかしNHKが18,19歳を対象に行った世論調査では、9条改正必要なしが53%と必要の18%を大きく上回っているなど、世論はなお9条改憲に批判的である。次期臨時国会で自民党案を無理やり提案しても野党はもちろん公明党の理解も得られず、店晒しになるだけだろう。
 安倍は内閣改造で改憲へ向けたリスタートを切りたかったのであろうが、総裁選レースのスタートを図らずも切ってしまった形となった。
 「改憲ファースト」を封印した安倍は新内閣発足にあたり、苦境に陥った時の常套手段である「経済第一」を強調した。しかし「アベノミクスの推進」「デフレ脱却」を掲げる一方、19年10月の消費税10%引き上げを予定通り行うと、先の「ウェーク」で明言するなど、語れば語るほど経済政策の無定見さが露わになるだけである。
 来年4月の任期までに物価上昇率2%が絶望的となった日銀の黒田も、毎日新聞のインタビューでは「いずれ賃金は上がり、物価は上昇する」野放図な金融緩和の出口戦略も「(国債暴落などの)悪影響は出ない」と自分は安倍政権とはかかわりのないような口ぶりである。
 賃金上昇も官製春闘の限界が露呈し、受け手である連合も「残業代ゼロ法案」を巡り、7月27日の中執で執行部が「政労使合意」を撤回、安倍との会談を見送った。一時は民主党政権時以上に縮まった政労間の距離が拡大し安倍離れが進んでいる。
 経済政策で成果が見込めない以上、安倍が政治的強硬路線に回帰することは火を見るよりも明らかである。国連での核兵器禁止条約採択後初めての、広島、長崎の記念式典に参列した安倍は、あいさつで条約に言及せず、一方的に核保有国の立場に立ちながら「核軍縮の仲介役」を担うと見え透いた詭弁を呈した。
 こうした白々しい言動に広島では被爆者団体代表が「あなたはどこの国の総理ですか」と詰め寄り、長崎では市長が平和宣言で核兵器禁止条約への政府の対応を求めた。
 15日の戦没者追悼式でも天皇が戦争加害に言及する一方、安倍は今年も、アジア諸国に対する責任や謝罪については触れることなく、不戦の表明も行わなかった。
 
頼みは金正恩
 こうした姿勢を維持するにあたって、最も頼りにしているのはトランプではなく金正恩であろう。7月4、29日に北朝鮮はICBMを試射、技術力を誇示し、さらに「グアム島を包囲する形で4発を同時着弾させる計画」を公表、挑発をエスカレートさせた。これに対しトランプ政権も過激な発言で応酬、今年4月の朝鮮半島危機が再燃した形となった。
 これを奇貨とした安倍政権は、ICBMが上空を通過するとされた3+1県へPAC3を配備し、危機感醸成に躍起になっている。8月10日の衆院安全保障委員会で小野寺は、日報問題の真相解明を拒否する一方、対北朝鮮問題では積極的な答弁を行った。
 民進党の質問に対し、北朝鮮がグアムを攻撃すれば存立危機事態として、集団的自衛権を発動し迎撃する可能性があると答弁、その根拠として「アメリカの抑止力、打撃力の欠如は存立危機に当たる可能性がないとは言えない」としたのである。
 しかし、これは想定が非現実的であり、飛躍しすぎであろう。そもそもグアムの米軍基地が攻撃されても、米軍の攻撃力が欠如するわけではない。さらに攻撃された時点で、ミサイルはすでに日本上空を通過しているわけで迎撃などできない。 
 また日本上空では大気圏外約500Kmを上昇中で、どこに向かうかはこの段階では不確定であり、推定での迎撃が「存立危機事態」とはとても言えないであろう。また海自イージス艦のSM3ミサイルでは能力不足であるし、PAC3など逆立ちしても届かない。
 小野寺は「敵基地攻撃能力」の保持を提唱しているが、北朝鮮の移動式ミサイルには無力である。公開された北朝鮮の映像でも明らかなように、発射地点は空き地や道路上であり、移動前の秘匿されたミサイルを探すのは困難である。ミサイルを撃たさないための軍事的オプションは、イラク戦争のような「敵国」中枢への先制攻撃=予防戦争以外には有りえない。
 安倍―トランプは制裁と圧力の強化を選択しており、8月17日に開かれた日米2+2でも北朝鮮に実行圧力をかけることで一致した。安倍政権は北朝鮮の挑発を利用しながら、独自の軍拡を進めている。
 安倍は6日広島で「防衛大綱」を見直し、南西諸島の部隊増強、弾道ミサイル防衛強化、宇宙、サイバー空間の軍事化などを進めることを明らかにした。これにより地上配備型イージスシステムの導入、イージス艦のミサイル防衛対応改修の前倒し、新型対艦ミサイルの配備、新型護衛艦の大量建造などが具体化されつつある。
 
弛緩する「最前線」
 安倍政権は、外交オプションを放棄し強硬路線を突き進んでいるが、世界の趨勢は違う方向に進んでいる。国連は制裁強化を決定したが、中露のみならず独、仏も米朝のエスカレーションに警鐘を発し、平和的解決を要求している。      
 当事者の米朝も8月14日には金正恩が「アメリカの行動を見守る」と発言、アメリカも、ティラーソン、マティス両長官が、引き続き軍事力行使も選択肢としながら、交渉の用意もあることを表明するなど、31日までの米韓合同演習を睨み駆け引きが続いている。
 そもそも北朝鮮の「グアム攻撃計画」も、指揮所に掲げられた画像が6年前の衛星写真であるとか、「愛媛県」を見落とすなど粗雑な点が多々あり、プロパガンダの意味合いが強いとみられている。
 また「最前線」にあるはずの米第7艦隊では事故が多発している。今年に入ってからでも1月にイージス巡洋艦が横須賀沖で座礁し、艦長が解任された。さらに6月にはイージス駆逐艦がコンテナ船と衝突、7名が死亡、責任を問われた艦長、副長ら3名が解任された。
 同月には沖縄東方を航行中のイージス巡洋艦で下士官が行方不明になったが、一週間後に機関室に潜んでいるのが発見された。8月にも南シナ海で行動中のイージス駆逐艦で大尉が行方不明となる事件が発生(これは未発見)、オーストラリアでは演習中の沖縄海兵隊のオスプレイが墜落した。
 オスプレイの事故は調査中であるが、衝突や行方不明は油断や規律低下、メンタルヘルス問題に起因するものであり、トランプがいくら好戦的言辞を吐いても現場とはギャップがあることが明らかとなった。
 日本も同様であり、日報問題の混乱は陸自のモラルハザードを現すものであるが、7月には女性隊員が、営舎内で出産した嬰児を殺害したと疑われる異様な事件が発生している。昨年末に幕僚長が事実上更迭された海自では、後任に戦闘職種ではなく、「経理」出身者が就くと言う異例の事態となっており、部隊の掌握を不安視する見方もある。
 「朝鮮半島危機」との乖離は著しいものがあるが、安倍、トランプ本人たちが危機を煽りながら、のんびりと夏期休暇を取っている状況では、金正恩もまだまだ枕を高くして寝られるだろう。
 朝鮮半島の緊張が緩和されても、安倍は軍拡を続けるだろう。イージスアショアや超音速対艦ミサイルは対北朝鮮としてはオーバースペックであり、真の敵は明らかである。黄昏を迎えている安倍政権の終焉を早めなければならない。(大阪O)