アサート 229号(1996年12月14日)
【投稿】 侵略の事実は消せない by 田中雅恵
 「アサート」11月号(No.228)の「紙上討論ー総選挙結果は何を提起しているか」の記事の中で、看過できない発言があった。「G:今関心のあるのは、歴史観の問題。藤岡という人が書いている。今の日本の歴史観について、私は基本的に彼の意見に賛成なのですが......」
 Gさんが挙げた藤岡というのは、藤岡信勝・東大教授のことで、「『従軍慰安婦』をとりあげることは、そもそも教育的に意味のないことである。人間の暗部を早熟的に暴いて見せても、とくに得るところはない」(「論争・近現代史教育の改革 歴史教科書批判運動の提唱」『現代教育科学』96年9月号)と主張し、彼が主宰する「自由主義史観研究会」に属するメンバーが、精力的に発言を繰り返している。この動きは、コミック「ゴーマニズム宣言」でHIVや部落問題など様々な社会問題を取り上げて大きな役割を果たしてきた小林よしのり氏にまで及んでいる。
 今、「慰安婦」問題が盛んに取り上げられるのは、中学校の全教科書に記載されるという、同問題に対する認識の広まりと深まりに対する抵抗であり、彼らこそが追い詰められている結果だと、上杉聡氏(戦争責任資料センター事務局長)は分析しているが、私も同感だ。歴史が前進すれば、その反動もまた起こってくるのが、歴史の必然。と考えれば、そうカッカする事もあるまいにと自分で思いつつ、やはり許せない。
 日本のかつての侵略の事実を伝える教科書記述の削除や改変を求める人々は映画「ナヌムの家」をご覧になっただろうか?繰り返し証言される生々しい事実に対して、「慰安婦たちは業者に伴われて戦地に働きに来た売春婦であり強制連行ではなかった」と、あの人達に面と向かって言えるのか!「17歳の時、日本の軍人に『殺す』と脅かされて連行され、最前線で一日何十人もの軍人の相手をさせられました。そのつらさは・・・もう人間のすることではありません。いまでも夢に見ます。死ぬまで続くでしょう。」(金学順さんの証言から) 吉見義明・中央大学教授が1992年に、戦争中の公文書を防衛庁防衛研究所図書館で見つけ、発表したことが、日本政府や軍の関与を証明することになった。かたくなな態度を取り続けるものに対しては、やはり《事実》を証言なり資料で突きつけていくしかない。
 Gさん、一度「ナヌムの家」を見て下さい。(今月11日、四条畷市中野三丁目の同市市民総合センターで上映されるそうです)(大阪 田中雅恵) 

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